医療大麻に好意的な研究が次々と出されているにも関わらず、海外でも各国政府
は世論や専門家の意見に耳を貸すことを頑固に拒んでいる。しかし、住民投票や
法廷での判決など、政府に対する法的なチャレンジは日増しに勢いを増してい
る。
1999年3月には、米国政府から研究資金を得て医学研究所(IOM: Institute of
Medicine)が実施した研究レポートが、「大麻の摂取は、特定の患者にとって、
摂取によるリスクを上回る治療的有益性がある」ことを示す「相当規模の合意」
を見たと報告した。同報告書は、「痛みやエイズによる憔悴といった慢性的症状
を呈する患者にとって、大麻吸引以外、症状が緩和される明瞭な代替方法がない
ことを認識」し、医師による個別のマリファナ臨床研究を許可することによって
患者のマリファナ入手を可能にする勧告書が出されたが、米国政府はそれを拒否
した。
1996年の選挙において、アリゾナとカリフォルニアでは、医師が承認した患者に
対する医療大麻を認める住民投票を採決した。州法で認められたにも関わらず、
これらの州、そして米国全土では合衆国連邦法を根拠とした医療大麻使用者に対
する逮捕例は後を絶たず、医療薬を拒否されて亡くなった患者も少なくない。
スイスやオランダでは少量の大麻所持はすでに刑罰の対象からはずされている。
英国では国民のほとんどが大麻の医療使用に賛成しており、政府機関の一部にも
その声は強い。1998年11月には、英国上院の科学委員会が医師による大麻の処
方、患者による使用の合法化を政府に対し推奨した。医薬品基準に必要とされる
大麻の長期臨床試験を認可したものの、政府は即刻の医療大麻開放を求める上院
の推奨を拒絶。とはいえ、医療目的で大麻を所持し逮捕された人々に対し、英国
法廷の陪審員が無罪判決を下すという、現行の法律に矛盾する状況が生まれつつ
ある。
本年7月31日には、てんかん患者の訴えを受けたカナダのオンタリオ最高裁が
「医療大麻という見地を許容しない点において、大麻所持禁止そのものが憲法に
違反する」という見解を示し、1年以内に政府が大麻法を改正しなければ、政府
が敗訴するという採決を下した。
なぜこれほど、各国政府はマリファナ合法化を拒み、医療目的の使用さえも認め
ようとしないのだろうか?マリファナに対して国民が抱く一般的なイメージを考
えれば、その答えは明らかだ。米国でマリファナが取り締まりの対象となったの
は1937年。暴力、狂気を引き起こす危険な薬物として宣伝された。マリファナが
暴力、狂気を引き起こすというシナリオに根拠がないことが明らかになった今
も、その「神話」はしっかりと引き継がれている。政治家はきわめて保守的な環
境に生きており、麻薬関連の法律改正には躊躇せざるを得ない。他の政治家、マ
スコミ、後援者から「ドラッグに甘い」と見られることは、ほとんどの政治家に
とって、政治家生命に終止符をうつ自殺行為に等しい。世界中の市民、患者、法
律家、裁判官、医師、科学者が大麻の医療使用の合法化を求めているにも関わら
ず、政府首脳は首を縦に振るわけにはいかないのである。
JAMMが結成されたのは昨年。MS患者とその家族、薬剤師、ジャーナリスト、作
家、市民団体活動家、弁護士、サラリーマン、そして前述のレストランオーナー
といったまったく世界の違う個人が集まった。「月に2回ほど集まって、大麻の
用途について研究しています」と前田さん。「研究会を重ねるにつれ、治療薬と
しての大麻の価値に確信を持つようになりました。法律は絶対に変えなくてはな
りません」
その目的を達成するために、JAMMではいくつかの戦略を立てている。その中心に
なるのが、「大麻は医療品として有益」という一般市民の理解を促すことであ
る。「究極的には、法律改正を求めているんですが」と前田さん。「そのために
はまず、国民の認識を変える必要があり、特に医療関係者の方々に大麻の真の姿
を理解してほしいと思います。患者さんやお医者さんの大麻に関する認識が変わ
れば、そこからが法律改正への動きがでてくるでしょう」
医療大麻は医師の間でもほとんど知られていない。「医大で使われる教科書には
大麻に関する記述が数行しかありませんから、医療目的の使用については医療関
係者も何も知らないのです」 控えめながらも、医療大麻に強い関心を示す医師
は少なくないことを前田さんは指摘する。「ガンの専門医と話したのですが、大
変興味を持たれたようでした。患者のためになることなら、何にでも興味を持
つ。それがすべてのお医者さんの基本的な姿勢です」
大麻取締法の緩和が大麻の乱用につながると考える人もいる。しかし、医学面で
のモルヒネやコカインの使用は非合法な乱用につながっていない。「医療大麻の
管理は医療施設の責任とすべきでしょう」と前田さん。「一般人に広がることを
懸念して医療大麻を禁じることはばかげています」
前田さんは続ける。「患者さんは効果があるすべての医薬品を手に入れる権利が
あります。大麻の医療使用を許可してほしい、という患者さんや家族の方々の悲
痛な叫びに早急に対応するよう、私たちのグループは政府に求めているんです。
もし、医師による研究という道さえ開けば、法律は変わると思います」
MSの治療に大麻が果たす貴重な役割を前田さんは指摘する。「MSに効果的な薬は
少なく、大麻が一番効果的です。MSの病状管理にマリファナがきわめて効果的で
あることは(海外の研究で)広く裏付けられています。MSを完治させるわけでは
ありませんが、苦痛に満ちた様々な症状を抑えることができます」国民一般のマ
リファナに対するイメージに関し、「中毒性のある危険なドラッグだと考えてい
る人が多いのですが、それはまったく違います。中毒性はまったくありません」
小笠原さんは、JAMMを正確な情報を提供するツールと考える。「恐ろしいドラッ
グから有益な医薬品へ、大麻のイメージを変えなくては、と思います。自分の国
で、このきわめて有益な医療品を摂取したいと切望しています」
現在、非営利団体の登録申請中のJAMMだが、そのメッセージがより多くの人に届
くにつれ、サポートの輪は広がって行くことだろう。JAMMでは医療大麻について
もっと知りたいという方々からの問い合わせを歓迎しており、ボランティアや寄
付、会員を募集している。
JAMM(医療大麻を考える会)の連絡先:
メ医療大麻を考える会
郵便番号202-0015
東京都保谷郵便局
私書箱7
電話/ファックス:0424-63-4589
ホームページ:<http://www.iryotaima.org>
Eメール:head_office@iryotaima.org
(JAMMのホームページは現在のところ日本語。英語版もまもなく開設の予定)米
国政府の1999 Institute of Medicine Studyの詳細は以下で閲覧できます(英語
のみ):
<http://www.mpp.org/science.html>
厚生省の「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ(日本語):
<http://www.dapc.or.jp/info/index-i.htm>
Links:
Japan Medical Marijuana Association
ACMed (Germany)
The British Medical Journal Editorial (1995)
New England Journal of Medicine Editorial (1997)
Affidavit by Dr. Grinspoon (Canada, 1997)
Affidavit by Bryan A. Krumm (1999)
Marijuana Policy Project on medical uses of marijuana
Carl. E. Olsen's Marijuana Archive
Californians for Compassionate Use
Medical Marijuana Magazine
Will Foster, Oklahoma rheumatoid arthritis sufferer: 93 years in jail!
GW Pharmaceuticals (UK)
See also:
Hemp in religion,
for fibre, food and fuel,
as a "drug".
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