「麻と人類文化」3号イーメイル版

発行者 武蔵野共同法律事務所弁護士丸井英弘

電話0423-25-1224

 NHK大麻報道是正裁判は、現在上告中です。とりあえず、現在までの経過報告とその内容の紹介をするために3号を作成しました。

麻産業設立計画の経過については、4号で報告をしたいと思います。

1998年6月3日丸井英弘

目次

第1。大麻報道是正裁判の経過報告

第2。1審判決の問題点

第3。控訴審判決文の紹介

第4。控訴審判決の問題点

第5。上告理由の紹介

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第1。NHK大麻報道是正裁判の経過報告

1。1996年(平成8年)3月7日

NHK総合テレビ「ニュースセブンクローズアップ現代」担当の原ディレクターから丸井英弘に対して、大麻の規制のあり方などについての取材の依頼がある。

2。1996年(平成8年)3月14日

丸井英弘が武蔵野共同法律事務所で原ディレクターから取材をうける。

3。1996年(平成8年)3月28日午後9時30分から10時までNHK総合テレビにおいて「若者に広がる大麻汚染」という表題で大麻を麻薬と断定して報道した。

4。1996年(平成8年)9月20日

東京地方裁判所に対して、NHK大麻報道是正裁判を提起する。

5。1997年(平成8年)9月17日

東京地方裁判所民事40部で原告の請求を認めないという判決が出される。

6。1997年(平成8年)9月18日

東京高等裁判所に対して、NHK大麻報道是正裁判1審判決に対して控訴を提起する。

7。1998年(平成8年)2月18日

東京高等裁判所第12民事部で控訴を棄却するという判決が出される。

8。1998年(平成8年)2月24日

東京高等裁判所第12民事部の控訴棄却判決に対して、最高裁判所に対して上告を提起する。

9。1998年(平成8年)4月3日

上告理由書を提出する。

第2。1審判決の問題点

準備書面(控訴の理由)で1審判決の問題点を明らかにしていますので、それを紹介します。

平成9年(ネ)4307号損害賠償等請求控訴事件

準備書面(控訴の理由)

                       控訴人  丸井 英弘

                     控訴人  沼倉 英晶

                       被控訴人 日本放送協会

      平成9年11月10日

控訴人本人・控訴人沼倉代理人

弁護士丸井英弘

東京高等裁判所第12民事部御中

 控訴の理由は、次の通りである。

第1。争点整理が不十分であり、審理が十分になされていない。

1。原審の争点整理は、次の通りである。

「5 争点

 本件の主要な争点は、1、民法723条、放送法4条、取材時の合意違反又は被告との間の受信契約に基づく、別紙誓約書の交付請求についての訴えの適法性 2、大麻が有害か否か 3、原告らの右誓約書交付請求の当否 4、原告丸井の慰謝料請求の当否である。」

2。しかしながら、この争点整理は極めて不十分である。

本件の基本的争点は、「大麻汚染」と表題をつけたことと番組の中でアナウンサーが大麻を「麻薬」と言っいることが放送法第三条の二 一項三号「報道は事実をまげないですること」、放送法第三条の二 一項四号「意見が対立している問題については、出来る限り多くの角度から論点を明らかにすること。」、放送法第四四条一項三号「我が国の過去の優れた文化の保存並びに新たな文化の育成及び普及に役立つようにすること。」および放送法第一条二号「放送の不偏不党、真実及び自律を保証することによって、放送による表現の自由を確保すること。」に各違反しているのかどうかということであるが、この点の審理が全く行われていない。

また、判決で争いのない事実として認定されている次の放送内容が、大麻についての作用を正確に報道しているのかどうか、特に放送法第三条の二 一項三号「報道は事実をまげないですること」、放送法第三条の二 一項四号「意見が対立している問題については、出来る限り多くの角度から論点を明らかにすること。」に違反していないのかどうかについての審理がなされて全くなされていない。

「これ(大麻)を使用しますと大変気分が高揚し、そして視覚や聴覚が過敏になるとされています。しかし、多量に服用しますと、幻想や妄想に襲われまして、精神錯乱状態になるともされています」

「大麻は大量に使用すると、幻覚症状を現したり体にも悪い影響を与えることを繰り返し説明しています」

「若者の身体に迫る大麻は、覚せい剤やコカインなど、より強い薬物への入り口にもなっています」

3。また、判決は、「大麻が有害か否か」を争点としているが、これは、本件での争点ではない。

本件の基本的争点は、大麻が、「大麻汚染」や「麻薬」と評価されるものなのかどうか?ということである。

第2。「受信契約に基づく請求について」の審理も不十分であり、また理由も不備である。

1。原判決は、本件受信契約に基づく請求について次のように判断した。

 「原告浅田、同沼倉、同藤井の受信契約に基づく請求について

 右原告らは、被告との間の受信契約に基づいて別紙誓約書の交付を請求しているが、このような請求権が、受信契約中のいかなる契約文言に基づくものであるのかについて何ら主張立証しない。よって、右原告らの右請求は主張自体失当であり、受信契約の存否などにつき 判断するまでもなく、排斥されるべきである。」

2。しかしながら、控訴人(原告)沼倉が被控訴人と受信契約を締結していることは、被控訴人も認めているので、争いの無い事実である。そして、この受信契約は、放送法にもとずいて締結されるものであるから、被控訴人が放送法を遵守することは、受信契約当然の前提である。従って、本件番組が放送法に違反しているのか否かにつき審理をするべきであるのそれをしていない。

第3。「取材時の合意違反」についての事実認定も誤っており、また理由も不備である。

1。原判決は、控訴人(原告)丸井の取材時の合意違反を理由とする民法四一七条、七二二条に基づく請求について、次のように判断した。

「 原告丸井の主張は、本件取材時に、被告担当ディレクターの原との間で、幅の広い見方で制作に臨むこと、放送法の諸規定を遵守することを約束したにも関わらず、被告は右合意に反する内容の本件番組を放送したとして、債務不履行又は不法行為に基づき、別紙誓約書の交付を求める趣旨のものと解される。

 しかしながら、甲一四によれば、原が原告丸井に対し、平成八年三月七日、本件取材の趣旨を説明するに当り、「以前、NHKの番組取材でトラブルがあったとのことですが、今回も番組内で直接先生のご意見を紹介できるかといえば難しいとしかいえません。しかし、通り一遍の紋切り型の認識で制作、取材にのぞむよりも幅の広い見方でのぞみたいと思い、御相談した次第です。是非御一考いただいて御連絡いただければ幸いです。」という文面のFAXを送信したことが認められるところ、右の表現は、番組制作の基本的方針や心構えを表明し取材を申し込んだというに止まり、これをもって、被告が原告丸井に対し、放送すべき本件番組の具体的内容又は事項等について約束したものと評価することはできず、他に、被告が一定内容の放送をなすべき債務を負担したとの事実を認めるに足りる証拠はない。 」

2。原判決の事実認定および判断は、全く納得できない。

被控訴人は、原判決も争いのない事実として認めるように、テレビジョン放送等を行うことを業務として、放送法に基づき設立された法人である。従って、被控訴人は本件のような取材などそのすべての業務の遂行過程において放送法を遵守することは、当然の前提である。もし、仮に被控訴人が放送法を遵守しないのならば、控訴人丸井は、本件取材には、応じなかったものである。現に、控訴人丸井は、以前NHK教育TVの取材に応じたが、その番組の表題が「若者をむしばむ大麻」とされ、第2東京弁護士会人権擁護委員会で被控訴人の報道姿勢が問題にされた経験があるので、その事情を話して本件取材を一度は断ったのであるが、「ーーーしかし、通り一遍の紋切り型の認識で制作、取材にのぞむよりも幅の広い見方でのぞみたいと思い、御相談した次第です。是非御一考いただいて御連絡いただければ幸いです。」との担当記者のファクスをみて、大麻を一方的に麻薬扱いするということはないと判断して取材に応じることにしたのである。そして、現実の取材における担当記者との話でも大麻を一方的に麻薬扱いするという話は、出てこなかったものである。

第3。控訴審判決文の紹介

控訴審判決文の内容を紹介します。

平成9年(ネ)第4307号損害賠償請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成8年(ワ)第18339号)

平成9年12月22日 口頭弁論終結

判 決

東京都目野市程久保820 東京都多摩更生園公舎2−201

控訴人 沼倉 英晶

右訴訟代理人弁護士 丸井 英弘

東京都国分寺市南町3ー18ー8

控訴人 丸井 英弘

東京都渋谷区神南2丁目2番1号

被控訴人 日本放送協会

右代表者会長 海老澤 勝二

右訴訟代理人弁護士 柳川従道

同    室町 正実

同    永野 武志

同    幸村 敏哉

主 文

一 本件控訴をいずれも棄却する。

二 控訴費用は、控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一 当事者の求めた裁判

一 控訴人ら

1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

2 被控訴人は、控訴人らに対し、原判決別紙記載の誓約書(ただし、控訴人ら以外の名宛人の部分を除く。)を交付せよ。

3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二 被控訴人

控訴棄却

第二 事案の概要

事案の概要は、次のとおり、改めるほかは、原判決「第二 事案の概要」のとおりである(なお、控訴人丸井英弘の損害賠償請求に係わる訴えについては、控訴がない)。

以下省略

 

第三 当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人らの請求をいずれも棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおりである。

1。本件訴えは、本件誓約書の交付を求めるものであり、その請求の特定に欠けるところはない。また、本件に開しては、その給付請求が認められるかどうかを判断すれば足りるものであり、その請求の背後の意思をそんたくして、これを不適法とする余地はない。

2。本件番組放送の内容は前判示のとおりである。控訴人らは、その内容が控訴人らの見解に反するものであり、真実でもなかったから、その名誉ないし信用(人格権)が害され、放送法にも違反すると主張するが、法律が大麻を有害薬物とし、その所持・使用等を禁止していることは、前示のとおりである。控訴人らがこれに反する見解をもつことは、それが違法行動にまで至らない限り間題はなく、その信条の自由は尊重されねばならないが、他方、その見解(まして、それは現行法上違法なものである。)に基づいた放送番組の制作・放映を要求できる筋合いのものではない。

目本国内においてテレピの受信設備を設置した者は被控訴人との受信契約の締結を強制されており、これに基づいて受信契約を締結しているが、これは被控訴人と受信契約を締結した者すべてに共通であり、控訴人らに特有のことではないし、そのような要求をする権利が被控訴人との受信契約の締結によって導かれることはない。放送番組については、善良な風俗を害しないことが要求され(放送法一二条の二第一項一号)、法律の定めがない限り、何人からも千渉され、又は規律されることはない(同法一二条)。

本件番組の内容が真実に反すると認めるに足る証拠はない。その放映による控訴人らの人格権の侵害は認められないし、放送法違反の事実も認めることができない(そもそも、仮にこれらの事実があったとしても、本件誓約書のような内容の文書の交付を請求することができるものではない。)。

なお、民法七二三条又は放送法四条は、その趣旨からいって、およそ本件誓約書の交付請求を根拠付けるものとはいえない。

控訴人丸井は、同人との取材時の合意に反したことを本件請求の根拠として主張する。しかし、甲14及び15によれば、右取材は本件番組制作の参考として同控訴人の意見を聞きたいという趣旨のものであって、その意見を番組に反映させるというような合意が成立したとは認められないし、まして本件誓約書交付詰求の根拠となる合意の成立を認めることはできない。

3。控訴人らの詰求は、理由がない。

第四 結び

よって、本件控訴は埋由がないから、いずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第12民事部

裁判長裁判官 稲葉 威雄

  裁判官 大藤  敏

   裁判官 橋本 昇二

第4。控訴審判決の問題点

上告理由書では、次の内容で控訴審判決の問題点を指摘しています。

はじめに(大麻取締法の当否を根本から見直すべきである)

第1 原裁判所の判断

第2 原判決の問題点

1。大麻取締法の適用対象についての解釈の誤りと理由不備

2。本件番組の内容が真実に反するか否かー大麻は「麻薬」と呼んだり「大麻汚染」と番組の表題をつけることが適切か否か?

3。原判決の解釈は、憲法第19条・21条に違反し、かつ理由不備がある。

4。原判決の放送法に基づく受信契約の解釈の誤りと理由不備

5。取材の際の合意違反について、原判決の事実認定の誤りと理由不備

第3 上告人丸井英弘の被上告人の取材の際伝えた大麻に対する見解

第4 麻薬の薬理学的・社会学的定義と大麻。

第5 大麻の有益性について